サービスはこころでする

「風立ちぬ(THE WIND RISES)」(一橋大学)

 8 23 日、一橋大学如水会館での如水会100周年記念ビアパーティでのこと。会場でマーキュリーシリーズの販売支援に立っていたら、一人の後輩がふっと近づき、「2004年に大学でまちづくりの話、聴きました。...中小企業診断士さんですよね」と。えっ!覚えていてくれたの。

 「21世紀のキャプテンズオブインダストリーを考える委員会」主催の講演会に呼んで頂き、一橋大学で初めて話をした。彼が言うのはその時のことだ。概要はこのウェブサイト「講演」に載せたのを思い出し、実はもう一度見直したら、なんで私がと恐縮しながら話したおぼつかない寄り道人生の経験談であった。

 聞けば地元に帰り植木の生産者になりまちづくりをやっているという。彼の進路選択に拙い話など万分の一も関与していないとは思うものの、よくぞいい社会人になってくれたと感慨があり、うれしかった。

 マーキュリーキャップを購入し、被って帰っていった彼。そしてなんと昨日、郵便受けにこの青年からジブリの絵はがきが届いていた。映画「風立ちぬ(THE WIND RISES)」の一場面。帽子をかぶった少女がコートを風になびかせて冬の高原に向かう後ろ姿が大きく描かれている。サービスコミュニティと同じに彼もジブリ哲学に共感しているのだろうか。「また、どこかで」。

 

[2014.08.31]

 

「プラチナ構想ネットワーク」という船

 この前、豆腐屋さんの危機だって、地域の個性をまちがなんとかすれば、なんとかなるのではとお話した。そこで、なんだかわからないがふと思いついたのが、サービスコミュニティの社会哲学の支えと「ご挨拶」で紹介した小宮山宏氏が、先ごろプラチナ構想ネットワークというのを立ち上げたこと。

http://www.platinum-network.jp/

 活動のアピール文に「地域が自律的に自地域の課題を解決できる社会の実現」「エコで、高齢者も参加でき、地域でヒトが育ち、雇用のある、快適な社会を目指したワンランクうえのまちづくりを進める全国規模の連携組織」とある。2020年に50兆円の市場、700万人の雇用を創出できる社会を、と数値めどもハッキリだ。

 

 これまでは個々にプロジェクトを行ってきた自治体、企業、大学、研究機関、海外の姉妹都市。これらの組織が連携することで補助金に頼るのでない無数の独立採算の持続可能な事業、つまり自分たちの力で続けられる仕事やまちづくりを起こすのが小宮山氏の目的地。

 会の活動のなかで興味深いのはプラチナ大賞(地域課題を産業創出やアイデアあふれる方策で解決を目指す事例に与えられる賞)とプラチナスクール(自治体中堅職員を対象にして地域課題を解決する力を養い、卒業時には自分の自治体の課題解決モデルをプレゼンする)。

 一か月ほど前に北九州市とヤマトホールディング株式会社が「第2回プラチナ大賞」を受賞したとテレビニュースで観た。北九州は「公害克服の過程で生まれた環境技術を生かし、アジア諸都市との連携でグリーンシティとしてともに成長する構想」。ヤマトは「宅急便配達時にお年寄りの安否確認を進めるヤマト流まごころ宅急便」...。

 

 参加する自治体、企業会員は実に多い。自治体会員は横浜市の林市長はじめ、84の県知事・市町村長。法人企業会員ではサントリー社長就任が決まったばかりのローソン元CEOの新浪氏など82名。

 これだけの組織が共感している。しかし、私たちの地元、武蔵野市は参加していない。なぜだろう。このところ、足元の暮らしはちょっと夢不足と思うのは私だけだろうか。

 

 豆腐屋さん問題では“お宝”という言葉を使ったけれども、経営っていうのは地域や社会が誇れる「なにか」を見つけだし、独自の仕組みをつくって、結果、みんなが喜ぶモノやコトを生み出すこと。

 どうでしょう?やり方ひとつで武蔵野市だって相当ユニークなプラチナ大賞狙えないともかぎらない、かな?

 小宮山氏は東京大学総長として東大の大学改革を成功させた。自宅を「小宮山エコハウス」として電力節約ハウスの実証をした。学者なのに本当にやってしまうところがすごい。乗ったらおもしろい船だ。サービス開発コンサルタントをやってきた中小企業診断士の経験から直感する。乗船切符を手に入れるのもありかと思うが。

[2014.08.24]

 

お豆腐屋さん、消えちゃダメ(東京都武蔵野市。三鷹駅圏)

 東京は武蔵野市三谷通りにある豆腐屋さんのことは書籍版の『サービスはこころでする...』でも書かせてもらった。ここのご主人、70代の白髪交じりの職人刈りで、お客さんに商売ものを手渡すときいつもちょっと会話する。前に「実は今、花粉症の特効薬を開発中。お客さんに頼んで実験中なんだけど、できたら大変なことなので完成まで内緒にしておいてね」と、周囲3メートルは届く声で言っていた。

 朝が早いおじさんは豆腐作りの湯気の向こうから、店の前を通る小学生に「おはよう」を言うから子どもたちは帰りにテストの点を報告による。「なによりやっぱり豆腐がおいしい。スーパーに行けばさっと買えるだけど、やっぱりね」と近所の主婦。なんせ店の地下にある武蔵野の深井戸から汲む水でつくるから滋味と香りが特別なのだ。

 その店がもう、2か月ほどシャッターが開かない。数年前に揃って店に立っていたおかみさんがなくなり、最近は「豆腐つくたって誰も喜ばない...」ってときどき言っていた。

 そんなことはない。まだ春の頃、しばらくぶりでお店が開いた日、常連さんが次々押しかけて、「ああ、おじさん、よかった。」と大繁盛だったじゃないの。まちから、こんなおいしいものと、魚が藻に集まるように豆腐を通してなんとなくヒトが寄る場が消えていいわけがないと思うのだが。人が個人で支えきれなければ、まちでワヤワヤとみんなで

 武蔵野市のもっとも独自性ある経営資源、つまりまちの宝のひとつは良質な地下水。おいしい豆腐ができる水は、食だけでなく、教育、農業、福祉、産業などさまざまの暮らしの課題を解決する源でもある。みんなが自分のことに引きつけてそれぞれに活かすことのできる大事なお宝。それを忘れないでいたい。小さな問題から解決できないものか。

[2014.08.15]

 

ローカルとグローバルを行き来しながら

 さて、トップページの南イタリアのスライドショー、いかがだっただろうか。イタリアはスローフード協会の発祥地であり、食べること、着るもの、住むことなどへのこだわりが強い。

 南イタリアは地中海に囲まれた土地に、燦々たる太陽、豊かな海の幸。家族主義が強い地域ながらあくせく働くよりおいしいものを食べ、歌い、美しい住まいに暮らす。これが人々の美の感性。

 一方、北東イタリアにはカンパニズモという同郷意識があって、デザイナーを核にした同族経営が性能のいい事業化チームと協業してファッションなどの世界ブランドを生み出す。これも美の感性。

 いずれの地域にも共通するのはセンスあるユニークなまちづくり。我が地元のことを考えるとき、「へ~、こういうのもありか」と思って、こんな遠い外国を観るのもいいのでお店や歌うオジサンをご紹介。こんな風にローカルとグローバルを行き来しながらのフットワークで、「足元を観て遠くを観る」「遠くを観て足元を観る」こと、やってみませんか? 

 こんなこと企んだのはこころっとコンサルティングは全員留学の一橋大学を提案、支援して、留学した子がよく伸びるのを観てきたから。地球の反対側から日本を観れば、自分とはなにか、どう生きたらいいかが客観的にとらまえられるのだろう。ユニークな仕事に就く学生も少なくない。それに近い体験、ちょっとブログの世界で試みられればと思うのだが。

 

[2014.08.14]