サービスはこころでする

横濱おいしい物語

 春になるとでかけたくなる横濱。いつもだいたいいきあたりばったり歩くのだがズバリ、今回は目的が。それは去年の春、見つけた馬車道周富輝さんの店「生香園」。ここで評判の海鮮やきそばを食すのである。

 事前にネットでメニューをみると載っているのは、この海鮮やきそばをはじめ、5,6種類だけ。料理の種類は数百種と聞く。そのなかでよっぽどの自信作のみ、の潔さ。ホントに旨いんだろう、と唾がでる。赤と金でいかめしげににぎやかな店に入ると、注文して2分はかからない早さで目のまえに、会いたかった一皿が湯気をたてている。

 白い皿一杯に超極細の麺が見えないほど、鼈甲色のあんをからめた具。エビ、きくらげ、いか、アスパラ、にんじん、キャベツ、なんか緑の菜、豚肉。その他大勢の具材のみなさん。説明並べてる暇に食べたいので賞味したい御仁は行ってみてね。ほかの店の1倍半はある量なのにおいしくごちそう様!! もちろん、写真なんぞ撮る余裕なし。かつ、店をでた後港まで歩いたのだけど、ぜんぜんもたれない。予想以上のちょっとした驚き、とはこれだろう。また来たい。

 よし、気分いいのでもうひとつおいしいものを究めよう。この一本裏道にある「馬車道十番館」。昔は行き交う馬車もあったのだろうか、「牛馬用水飲み場」が玄関横に残る赤レンガの建物なんだけど、ここのショートケーキ、いつか試してみたかったんだ。一個立てのケーキなのに大ぶりでバースデーケーキみたいにまるくて、自慢の生クリームでデコレーションされてイチゴがふたつ。持ち帰りを頼むといつもそうなのだが、1つでも白いエレガントな箱にいれ、さらにお店外観のイラストの入った手提げにいれて玄関で黒服さんが「ありがとうございました」と手渡しでくれて。

  後程、仕事場でコーヒーを淹れて頂いてみた。「なんだ、これ!!」クリームもカステラも口に入れたとたんに溶けていく。昔っぽい甘さに本物のヴァニラの味がしっかりとするクリームはこくがあるのに軽くていちごの酸味が絡みこんなショートケーキは初めてである。

 おいしいものにはつくり手の見えない手わざが込められている。歴史を味に変えてきた「こころでするサービス」がそこにある。だから横濱はいい。

[2016.03.29]