サービスはこころでする

生きて動くような教室

 亜細亜大学で今年から始まった高校商業科の教員を育てる仕事、おもしろかった。一年の授業のまとめでは「生きて動くような教室をどうつくる」をテーマにワイガヤ。先週この授業をやったところだ。

 議論のタネには自著『サービス組織化経営論-オンリーワン・プラットフォームの創発-』を使ってみた。そのなかから「世の中は大抵、既存の仕組みのなかで目的を追究するネットワークからできているのだが、あるとき突然、なにもないなかから新奇性を追究するネットワークが飛び込んでくることがある。するとそれらが互いに影響し合うようになる。それが場を変化させ社会組織を次へ行かせる」という海外研究者の理論を抜き刷りで渡す。

 この解釈の仕方はいろいろあるが、教員になろうとする学生にとっては目的追究ネットワークとは教室のなかで生徒を指導する際の教員試験にうかるための教科書に添った座学を進めるプロセス。一方、新奇性追究ネットワークとは前もって決められたゴールなしの現場体験学習だ。座学だけだと教室は平坦だが、そこに一見行き当たりばったりにみえる世の中の変化を取り込むと、学生はその意味合いを自分なりに理解し、座学で得た知識を自分の経験で塗り替えていく。学生が商業の先生になったとき求められる総合力は生徒にこの両方のプロセスへの参加をうまく誘導できる企画力ではみたいな話で落とした。というよりみんなでストンと落ちた。私のシラバスにはいつも最後の一行に「授業を楽しもう」と書くのだが、今年もなんでもありで楽しかったねと言い合っておしまい。こころっとコンサルティングが企てる、教員と中小企業診断士のハーフの授業は、参加者の経験を蓄積し、毎年深くなる。来年は学生がもっと増えると事務局から言われた。ヤッホー、お役目果たして春休み~。                                                                                                                                                               

 

[2015.01.27]

 

「こころの授業」はこう創る!(武蔵野市他)

 現場体験学習には前回ブログで紹介した、まちにとってこれが欲しかったんだよと思えるサービスを創りだすプロセスとしての学外授業とともに、サービスの担い手になるためのこころを育てる座学が欠かせない。一橋大学の単発講義ほか、亜細亜大学、東京女学館大学、武蔵野大学でこのやり方を実施してきた。これを、本ブログのタイトルである『サービスはこころでする―マニュアルをちょっとはみだして「サービス上手」になるためのたくさんのお話―』の書籍版をテキストに、その目次を活用して次のように組み立てている。

1週 サービス研究① サービスとはなんだろう

2週 「また来たい」と思わせたコミュニケーション(海外編)

3週 コミュニケーション技法:チェックシート①

4週 コミュニケーション技法:チェックシート②

5週 サービス研究② ファーストコンタクトを大切に

6週 サービス研究③ 見えるモノを中心に届ける

7週 サービス研究④ 目に見えないモノを届ける

8週 「また来たい」と思わせたコミュニケーション(大学地元編)

9週 ゲスト講師(この科目OB)本授業を仕事でどう役立てる?

10週 サービス研究⑤ 「サービス人手」のうまいかけ方

11週 サービス研究⑥ サービス精神とはいったいなにか

12週 プレゼンテーションの技法

13週 学生発表「私が見つけたこころでするサービス」

14学生発表「私が見つけたこころでするサービス」

15ディスカッション:サービス業は喜ばせ屋

 『サービスはこころでする』の章のなかから、毎回学生が「こんな経験、あるある」と感じたエピソードを拾い、自分の経験に重ねて発表し、みんなで議論。一方で服装、聴き方、話し方からプレゼンテーション方法まで具体のチェックシートで確認。授業では正解をつくらない。発表や成績はプレゼンの巧拙などではなく、いかに自分にしか思いつかなかったことを夢中でやり抜いたかで評価。偏差値とは別世界の教室だから障害のある者、外国人学生の話し方など誰も笑わない。学期の終わりには各自、サービス引出を見事に整理し、教員などそっちのけで学生同士で授業が進む。なにより思いやりのこころが育つのが冥利。「大丈夫、これで社会人といいつき合いができる」と言って単位を渡す。

 

[2015.01.12]